明日7月9日(土曜日)はレスピーギの誕生日です。1879年生まれですので、3年後には生誕140年目を迎えることになります。因みに今年2016年はレスピーギの没後80年に当たりますが、あまり盛り上がってないようで、オーケストラの公演では4つか5つの団体がプログラムで意識的に取り上げるくらいで、むしろ吹奏楽の分野で積極的に『ローマの松』を演奏しようとしているといった状況でしょうか。オーケストラが演奏する作品は、以前にくらべれば滅多に演奏されない作品(『教会のステンドグラス』『風変わりな店』など)が取り上げられるようになってますが、別の見方をすれば、ローマ三部作を一夜で演奏するような強者オケは東京のコンサートでもほとんど見当たらないといった感じです。
 
全音では以下の3つのオーケストラ作品のポケット・スコアを出版しています。
 
 
1. ソロモンの夢/2. 夜明けのベルキスの踊り/3. 戦いの踊り/4. 狂宴の踊り
A5判/112頁/定価 1,500円(本体)
 
 
1. チルチェンセス/2. 五十年祭/3. 十月祭/4. 主顕祭
A5判/176頁/定価 1,836円(本体)
 
 
1. ボルゲーゼ荘の松/2. 地下墓地(カタコンブ)脇の松/3. ジャニーコロの松/4. アッピア街道の松
A5判/88頁/定価 972円(本体)
 
 
 
ところでレスピーギのオーケストラ曲は、ローマ三部作(噴水、松、祭)の他にも魅力的な作品が多くあります。(全音では『噴水』のスコアの出版がなくてすみません、汗)
 
●「第3組曲」のシチリアーナが有名な『リュートのための古風な舞曲とアリア』は3つの組曲から成り,いわゆるイタリア・ルネッサンスの時代に作られた音楽をオーケストラ曲として蘇らせています。
『ロッシニアーナ』は4曲で構成された組曲で、そのタイトル通り、ロッシーニの曲に基づいていますが、彼のあまり知られていない晩年の小曲から、それぞれの曲の性格に合わせたパレットを用いて描き出しています。締めの第4曲「純血のタランテラ」は『風変わりな店』にある曲とも共通する,いかにも陽気で情熱的なイタリア舞曲タランテラで、第3曲までのしめやかな雰囲気とは一変してしまうところが一興です。
『教会のステンドグラス』は旧約聖書の世界を、壮大なパノラマ映画のように分厚いオーケストラで描いた作品でやはり4つの曲で構成されていますが、元はピアノ曲として書いた作品をオーケストラに編曲しています。最近は吹奏楽アレンジでも広く演奏されています。最も印象的なのは第2曲「大天使ミカエル」のクライマックスで鳴らされる銅鑼(タムタム)の大音響でしょう。
『鳥 Gli Ucceli は、17世紀のクラヴサン曲を小編成のオーケストラのために編曲して5楽章の組曲としたもので、『リュートのための〜』に近い種類の作品とも言えますし、またある意味レスピーギ流の古典組曲(古風な舞踏組曲)のスタイルの作品とも言えるでしょう。爽やかで可愛らしい曲ばかりが並んでいます。ラモーの曲による第3曲「雌鳥」は特徴的な鋭い音形が印象的で面白いですが、ご年配の方にとっては終曲「郭公」が懐かしいFM番組のテーマ音楽として耳に残っているのではないでしょうか。
『ボッティチェリの3枚の絵』も小さな編成のオケのために書かれ、ボッティチェリが遺した3枚の名画の独特な雰囲気や印象を『三部作』とは違うタッチで描いた佳曲です。しかし巧みなオーケストレーションにより、小編成ながら大変色彩的に書かれています。所々ヴィヴァルディなどイタリアの先輩作曲家を思い起こさせる瞬間を潜ませている(?)のが面白いです。
● 最後に紹介する『ブラジルの印象』は3曲から成る組曲で、フランス六人組のミヨーが表現するブラジルとは異なる視点や表現で、ブラジルの土俗的な風土や民族性を聞かせてくれる興味深い作品です。ブラジルの広大な空の下の夜の静寂を表したような第1曲、密林に潜む古い遺跡を描いた第2曲「ブタンタン」は何匹かの蛇が出てきそうな不気味な情景の音楽で、危機的戦慄の瞬間を感じさせる部分もあります。終曲はブラジルの特徴的なダンスのリズムや歌が聞こえますが、熱狂的な音楽とは違い、あくまでもインプレッションの気分を損なわない曲調で仕上げられています。
 
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