実は先ほど、まなこさんが来社されました。
アポ無しは良いとしても、背後に音もなく近づかれるのはおやめください。(お願いだから、一声かけて)
蛇の目傘を携えた、相も変わらずの艶やかな佇まいは、塵の吹き溜まりのような編集室にはまぶしすぎます。
────
まなこさん、お一人でいらっしゃったのですか? 今日はどのような御用向きで?
「はい。日頃より聖志さんをお引き立てくださっている皆さまへ、一言御礼申し上げたく、言づけをお願いに参りました。わたくしは、からくりの文(ふみ)は扱えませんゆえ、代筆をお願いできますでしょうか。」
(からくりの文って、メールとかテキスト入力のことですかね…)それはお安い御用です。まなこさんのお言づけを、ブログ記事にさせていただきましょう。
────
皆さま、まなこでごさいます。
この度は、聖志さんの『いとあやし』に多大なる関心をお寄せいただき、心より御礼申し上げます。
常日頃より箏の道を精進し、あらゆる方々の生きる糧となるような箏の調べをお届けすることに心を砕いている聖志さんの作品を皆さまが迎え入れてくださり、わたくしにとって、これ以上の喜びはございません。
また折に触れて、皆さまからの温かいお言葉や、絵や切り絵などの創意に溢れた作品を、聖志さんと手を取り合い、楽しく拝見しております。
いずれも皆さまの心のこもったものばかりで、これらを享受する聖志さんは本当に幸せ者でございます。
今までのわたくしは、人々から恐れられ、忌み嫌われる存在でしたが、聖志さんの『いとあやし』によって「まなこ」という新たな命を授かりました。
いつまで現世に生き続けることができるのかわかりませんが、聖志さんの作品がこの世に在り続ける限り、わたくしも共に在り続けたいと願っております。
これからも聖志さんをお引き立てのほど、宜しくお願い申し上げます。
まなこ
────
入力完了! これで宜しいでしょうか?
「ありがとうございます。わたくしの思いを皆さまにお伝えすることが叶い、晴れやかな心持ちになりました。ご面倒をおかけしますが、後のことは宜しくお頼申します。」
承知いたしました。
あっ、お帰りですか? いぶくろ先生にくれぐれも宜しくお伝えください。道中お気をつけて。
・・・足音は立てて歩いてもらえませんか?
▲ご来社の際には、記帳もお忘れなく。