スイスの作曲家でフランス六人組の一人として知られているアルテュール・オネゲルが1923年に作曲した「交響的運動第1番」《PACIFIC 231》のフルスコアを新たに校訂編集し、2019年1月の新刊として発売しました。
これまでオリジナル出版社サラベール社のポケットスコアや、近年出版されたオイレンブルク社のポケットスコア(スコアはサラベールと同じ版)でお馴染みでしたが、可能な限りスコアを読む人が研究するときに迷いが起きないように、あらためて細部を見直して整理し、新しく制作したスコアです。
またこの新しいスコアは、これまでのミニチュアスコア(ポケットスコア)のような、いわゆる楽譜制作ソフトのFinaleで言うところの「最適化」された、つまり演奏している楽器の五線のみがその場その場で印刷されている形のスコアではなく、常にフル編成で全ての楽器の状態を見ることが出来るスコアになっています。
それによってオネゲルが「大コラール変奏曲」として作曲したこの《パシフィック231》の、主要主題や副主題などが対位法的な絡みを伴いながら変化していく様子や、テンポが次第に遅くなりがらリズムが細分化していくことで加速していく感覚を得ているこの作品独特の構造的な仕組みが、視覚的に把握しやすく読み解きやすくなっています。
さらに遠山菜穂美氏の解説で、この曲のそうした構造や主題の変化がわかりやすく詳細に説明され、あわせてオネゲルの人とこの作品が書かれた背景や初演の記録、またその後の演奏や音楽史の上での作品の位置づけなど豊富な情報を読むことができます。