【ビデオレター】西村朗《弦楽四重奏のための七つの断片と影》(12/4四人組コンサート)
12/4(金)に迫った第22回「四人組とその仲間たち」コンサート。
当日初めて発表される新作について、作曲家の西村朗さんから届いたビデオメッセージと作品解説をご紹介します。
西村朗《弦楽四重奏のための七つ断片と影》
- 演奏:クァルテット・エクセルシオ
演奏所要時間:約14分
作曲者による解説
- 作曲者にとってこれは弦楽四重奏のために作曲した6作目の作品である。ひとつ前の弦楽四重奏曲(2013年)には「第5番」という番号が付されているが、本作には番号はない。いわば番外の弦楽四重奏曲である。
番外としたのにはいくつか理由があるが、そのひとつは、これが作曲者の現在の内的課題による研究的試作であるということ。
曲中に提示される七つの断片は、それぞれに特性を持ちつつ孤立して不連続である。しかし、七つの断片は、もともとはひとつの原像を成していた一部であり、たとえれば、神殿遺跡のバラバラな遺物や、彩色描画された大瓶や壷の破片や、解読困難な神話の断章のようなものである。
本作では、不連続な一元発生的断片多像による構成と、各断片の性格づけを図るための孤立造形の方法、すなわち音響パレットや点と線の律動、各種ヘテロフォニーなどの探求を試みた。
また、タイトルにある「影」は、七つの断片が現れた後、コーダの部分において曖昧に回帰する断片群の記憶の影のような残像をさしているが、またそれは断片群の母胎である原像の亡霊的な残滓でもある。見えない原像と破片的フラグメンツ、そして時空を漂うそれらの一種幻覚的で混沌とした残影。
そのような「影」についての作曲上の試行も、今後の課題としてつづけてゆきたいと思う。
2015年の6月から9月にかけて作曲。演奏時間は14分程度。
(西村 朗)