【ビデオレター】西村朗《無伴奏ヴィオラ•ソナタ第3番〈キメラ〉》(12/8四人組コンサート)
12/8(金)に迫った第24回「四人組とその仲間たち」コンサート。
当日初めて発表される新作について、作曲家の西村朗さんから届いたビデオメッセージと作品解説をご紹介します。
西村朗《無伴奏ヴィオラ•ソナタ第3番〈キメラ〉》
作曲者による解説
- ヴィオラ独奏のための三番目のソナタ。ソナタIは〈旋回舞踊〉(2005) /ソナタIIは〈C線のマントラ〉(2007)。ヴィオラは弦楽器群の中部音域を担い独自の声と機能性を持つ個性的な楽器である。が、同時にヴィオラの独立楽器としての表現力には多元的なルーツが凝集されたような特性も感じられる。弦楽器の長い歴史の多元的なルーツが、ヴィオラに宿っているような、そのような感じを抱く。そうしたイメージがこの曲を起想させた。副題の〈キメラ〉とは、ここでは由来が異なる遺伝子情報を持つ細胞が一個体内に混在する架空の生物を意味している。このソナタは音によるそのようなキメラ生物であり、キメラ生物がヴィオラにポゼッションしているような曲とも言える。架空のキメラ生物は感情が断続的で安定せず、多元的な不定愁訴に苦しんて?いるようだが、一方で異常な快感の波に身悶えて自己陶酔的でもある。そのようなキメラ生物の生態はもの悲しく哀しく見える。しかしそれは複雑に謎めいて時に神秘的で、時に黙り込み、結局のところその本性はよくわからない。
曲は以下の四つの楽章より成る。
〈I〉Murmur and Cry(つぶやきと叫び)
〈II〉Doze(まどろみ)
〈III〉Desire(欲望)
〈IV〉Elegy(悲歌)
(西村 朗)