【ビデオレター】西村朗《氷蜜(ひみつ) フルート・ソロのための》(12/13四人組コンサート)
12/13(金)に迫った第26回「四人組とその仲間たち」コンサート。
当日初めて発表される新作について、作曲家の西村朗さんから届いたビデオメッセージと作品解説をご紹介します。
西村朗《氷蜜(ひみつ) フルート・ソロのための》
- 演奏:若林かをり(fl)
演奏所要時間:約12分30秒
作曲者による解説
- きらめく硬質の楽器フルートを、棒状に凍った蜜に見立てての独奏曲。
様々に息を吹き込み、吹きかけることによって蜜が溶け、音の母体である蜜棒から様々な音像が出現する。それら音響や旋律のイメージは一種生物的で官能的、時にエロチックである。
フルートを吹奏しながら声を出して歌い、二声部が絡み合う箇所があるが、そこでの声の高さはフルートと同じ音域であり、女声が想定されている。したがって、これは女性フルーティストのための独奏曲と言える。
「蜜」から溶け出すものは次のようなものである
最高音域から最低音域の間を大きな音程差を持って波状に揺れる旋律線。
モルト・スタッカートでの跳躍点描。
ホイッスル・トーン、歌口上のホイッスル(口笛)。
ハーフ・ブレストーン・フラッター。
ハーモニクス・コード・アタック。ハーモニクス同音トリル。
センシャル・カンタービレ。
ダンシング・スタッカート。
コーダの部分では、鋭いジェット・ホイッスルと無声音アタックの後、熱いため息が吹きかけられ、最低音域でのハーフ・ブレストーンの持続となる。
官能的なため息を受けた蜜棒のフルートは、奏者の手の中で溶けて消えてゆく。
作曲にあたっては、現代作品演奏の第一人者である気鋭のフルーティスト、若林かをりさんから助言を受けた。
若林さんに初演していただくことを大変嬉しく感じている。
(西村朗)