親しみやすい旋律、水彩画のような透明感、音楽の喜びをあなたに────
- 誰もが口ずさみたくなるようなメロディーと、変化に富んだハーモニーが織りなす世界観が魅力です。
はっとする転調も聴きどころ。透きとおった風を感じる楽曲のタイトルから、奏者はそれぞれの
イメージを膨らませて表現につなげることができるでしょう。
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作曲者インタビュー
- 「風透る街に」の“街”のイメージはどこなのでしょうか?
- イメージを限定させたくなかったので、あえて地名を明記していないのですが、実は「軽井沢」をイメージしています。軽井沢は何度も訪れた好きな街ですし、日本でありながら洋風な感じが自分の作風に合っているかと思って…。でも出来上がってみると、空想の中に浮かぶ街のようにも思われます。それぞれが思い描く「街」をイメージして弾いていただければ嬉しいです。
- タイトルと曲はどちらが先に出来るのでしょうか?
- どちらの場合もありますが、この曲集はタイトルが先の曲が多いですね。キーワードを書き出して、そこからイメージした曲がたくさんあります。
ただ、タイトルが後の曲もいくつかあったかな。たとえば「花束をかかえて」は、あっという間に曲が出来てタイトルが決まっていなかったのですが、たまたま連れ合いの誕生日だったので、このタイトルを付けてプレゼントしました。(笑)
- 曲集全体を通して“透明感”を感じましたが、この純粋な世界は意識してつくられているのですか?
- 自分自身が子供のようなところがあるから、純粋になったのかな(笑)とくに純粋ということは意識していなかったけれど、絵本の挿絵をかくような気分で曲を書きました。
ピアノ曲を書くことが好きなので、非常に嬉しく楽しい時間でした。
- 曲をつくる時、大切にしていることは?
- 「流れ」を大切にしています。無理矢理に組み合わせるというようなことはあまり好きではなくて、その時の勢いでつくりあげたいと思っています。絵でいえば塗り重ねるというよりも一筆書きのような…。ただ、流れだけでは困ったことも出てくるので、多少知性も働かせて(笑)。例えば「森の教会」では曲の中にこっそり讃美歌のメロディーをしのばせたりもしました。ぜひ見つけてみてくださいね。
- 大変だった曲はありますか?
- 「谷川の散歩道」は大変でした。はじめの2小節はとても気に入ったものが出来たのですが、そこから勢いが続かなくて。中間部でもなかなか流れがつかめず苦労しました。でも完成してみると好きな一曲になりました。
この曲の“谷川”は谷川俊太郎さんへのオマージュでもあります。
- この曲集を通して伝えたいことは何でしょうか?
- この音でしか伝えられないこの雰囲気、旋律の流れ、転調の流れ…曲そのものですね。楽譜が全てですので、楽譜を見れば分かっていただけると信じています。あとは感じたように自由に弾いていただければと思います。子供から大人まで幅広い世代の方に弾いてほしいですね。
- 後藤 丹 Makoto Goto
- 東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院修士課程修了。
主な出版作品に、混声合唱組曲『気球の上る日』(音楽之友社)、混声合唱組曲『みまかれる美しき人に』(全音楽譜出版社)、連作歌曲『この世界の全部』(JFC出版)、全音ピアノピースNo.549わらべ歌によるパラフレーズ「遊びをせむとや生まれけむ」(全音楽譜出版社)等がある。また、『動物の謝肉祭』(独奏版/連弾版)、組曲『くるみ割り人形』(連弾版)全音ピアノピースNo.528「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」、No.506「威風堂々」、など多数の編曲が刊行されているほか、『おいしいピアノレシピ・フルコース』、『ジョプリン:ピアノ名曲集』(いずれも全音楽譜出版社)等の音楽解説も手掛ける。
研究論文としては《フィガロの結婚》のカリカチュアとしての《ドン・ジョヴァンニ》―オペラのスコアに織り込まれたモーツァルトの機知―、岡野貞一の旋律構造―作品特定の手掛かりとして― 等がある。
2018年3月まで上越教育大学大学院教授を務める。現在、同大名誉教授。
CD情報
ピアノ曲集「風透る街に」
定価:2,700円+税
発売元:フォンテック
ピアニスト:高木裕美
- ピアニスト(CD演奏者)からのコメント
- 後藤丹先生の作品は、シンプルなメロディをもとに、美しい和音の響き、はっとする転調、対位法的手法などで立体的に、魅力的に作られています。このピアノ作品集《風透る街に》は、後藤先生の作曲技法があちこちに散りばめられ、高原の街にあふれる情景や風物が多彩に描かれています。私は、爽やかな風にイメージを乗せて、ピアノの音で自由に、色彩豊かに表現してみました。あなたも、この作品集と共にピアノの前で素敵な時間をすごしてみてください。
- 高木裕美 Yumi Takagi
- 福井県出身。東京藝術大学音楽学部ピアノ科卒業、同大学大学院修了。デトモルト国立音楽大学(ドイツ)に留学。これまで、国内及び海外において、リサイタル、オーケストラとの共演を含む数多くのコンサートに出演。また、録音も精力的に行い、グレン・グールド・スタジオ(カナダ放送協会)にてソロCD「シューマンアルバム」「ピアノファンタジー」「後藤丹ピアノ作品集」等を録音。1995年~1996年、ウィルフリド・ローリエ大学(カナダ)客員教授。1998年、文部省在外研究員として同大学にて教鞭をとる。現在、福井大学教授。日本音楽表現学会、日本演奏連盟会員。