楽譜

ナショナル・エディション『ショパン:ノクターン』日本語版の検証について

更新日:2022年4月5日

ナショナル・エディション『ショパン:ノクターン』日本語版の検証について
ポーランド音楽出版社(PWM)社長
ダニエル・チヒ博士
   ナショナル・エディション『ショパン:ノクターン』日本語版第1版第1刷(以下、本書と記載)について、本書の翻訳を担当した河合優子氏から当社(訳注:PWM社)に対し、本書には396箇所の問題があるとの申し立てがありました。
   当社は、音楽と言語の面で経験があり、信頼できる専門家に依頼し、その申し立て内容の検証をおこないました。検証の結果、河合氏からの申し立て内容のほとんどは問題にあたらないという結論に至りました。ただし、全音楽譜出版社、当社およびパヴェウ・カミンスキ教授によって実施された徹底的な編集および編集作業の絶え間ない緊密な協力にもかかわらず、10箇所については修正の必要性が認められました。詳細は以下のレポートをご覧ください。
   これらを修正することにより、本書はより良い内容になるでしょう。
   これからもナショナル・エディションの日本語版が、良き内容で全音から出版され、日本のみなさまにお使いいただけることに期待します。
Dot. weryfikacji japońskiego tłumaczenia Wydania Narodowego „Nokturnu” F. Chopina
Dr Daniel Cichy
Dyrektor i Redaktor Naczelny PWM
Polskie Wydawnictwo Muzyczne zostało poinformowane przez panią Yuko Kawai, która dokonała tłumaczenia na język japoński tomu „Nokturny” w ramach Wydania Narodowego Fryderyka Chopina pod red. prof. Jana Ekiera, że w opublikowanej przez wydawnictwo Zen-On japońskiej wersji woluminu „Nokturny”, w pierwszym nakładzie pierwszego wydania znajduje się 396 błędów.

Podjęliśmy więc decyzję o weryfikacji listy przekazanych przez panią Yuko Kawai błędów przez niezależnego eksperta, który może wylegitymować się zarówno muzycznym jak i lingwistycznym dorobkiem i doświadczeniem. W wyniku wykonanej analizy okazało się, że większość wskazanych przez panią Yuko Kawai usterek nie stanowi istotnego problemu. Mimo rzetelnie prowadzonych prac redakcyjnych i edytorskich przez wydawnictwo Zen-On i stałej ścisłej współpracy z zespołem Polskiego Wydawnictwa Muzycznego oraz prof. Pawłem Kamińskim, redaktorem Wydania Narodowego, 10 miejsc wymaga uzasadnionej korekty. Szczegóły dotyczące zakresu nieścisłości wymienione są w poniższym raporcie.

Uwzględnienie korekty sprawi, że japońska wersja Wydania Narodowego Fryderyka Chopina będzie jeszcze lepsza.

Mamy nadzieję, że wydawnictwo Zen-On będzie kontynuować publikację tego pomnikowego dzieła, które dotrze do jak najszerszej grupy pianistów w Japonii.
(検証者によるレポート)
■ナショナル・エディション『ショパン:ノクターン』日本語版についての検証結果
   訳者(河合優子氏)が問題を指摘している396箇所の訂正の要否について検証した結果、そのほとんどは訂正の必要がないものと判断した。監修者は日本語としての妥当性、読者にとっての分かりやすさ、楽譜の実態等を考慮しての修正、あるいは日本語とポーランド語の構造の違いから必要な補足を加えており、修正・補足のほとんどは原文からの乖離を生じさせるものではなく、翻訳としての許容範囲内にあると認められる。
   訳者の翻訳には総じて日本語として不明瞭な傾向が見られるため、監修者による修正箇所が多数になることはやむを得なかったと推察される。
   また、校訂に関する用語の訳については、このエディション全体およびJan Ekier, Wstęp do wydania narodowego (1. Zagadnienia edytorskie)における用例を検証した結果、現在の訳語に特に問題は認められない。

  原文に含まれる情報が不十分/不正確に、あるいは誤って翻訳されていると判断された箇所は以下の10箇所。必要な箇所には検証者からの付記を加えた。

      検証に用いた資料は下記4点。
  • a. 本書のポーランド語版原書
  • b. 河合氏による訳者原稿(全音より提供)
  • c. 監修者がb.を修正した原稿(全音より提供)
  • d. 出版された本書(全音より提供)
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① p.5 ノクターンについて・・・ Op.55 および 62

(誤)パリ、サン=ラザール通り34番地居住[略]は、

(正)パリ、サン=ラザール通り居住[略]は、

付記:原文は「St. Lazare […]」であることから、「34番地」を削除すべきである。

② p.7 ノクターン b-moll Op.9-1 第3小節

(誤)パッセージの自由なグループ分けやモティーフの構成を強調し、アーティキュレーションを変化させるのを彼が容認したことを示している。

(正)彼がパッセージの自由なグループ分けを容認していたことを示している。それによってモティーフの構造や、アーティキュレーションの変化を強調することが可能になる。

付記:本書では、「パッセージの自由なグループ分け」が「モティーフの構造や、アーティキュレーションの変化を強調すること」を可能にする、という構造が訳出されていない。

③ p.9 ノクターン Fis-Dur Op.15-2 第7, 15, 55小節〔右手〕

(誤)校訂者は細部の弾き方を第56小節に倣って統一したが

(正)それによって彼はこの細部の弾き方を第56小節に倣って統一しているのだが

付記:細部の弾き方を統一したのはショパンだが、本書では校訂者になっている。

④ p.9 ノクターン cis-moll Op.27-1 第1小節以降〔左手〕

(誤)該当する箇所すべてにおいて、和声の基礎となるCis音はペダルを踏み換える前に弾く。

(正)和声の基礎となるCis音がペダル記号の前に現われるすべての箇所で、同様に対処するとよい。

⑤ p.18 ノクターン F-Dur Op.15-1 第3, 5小節 および類似箇所

(誤)Wn2(→Wn3→Wn

(正)Wn2(→Wn3→Wn4

⑥ p.21 ノクターン Des-Dur Op.27-2 第1小節〔左手〕

(誤)ヴァリアントは次のように演奏するのがよいと思われる。

(正)ヴァリアントは次のように演奏してもよいと思われる。

⑦ p.21 ノクターン Des-Dur Op. 27-2 第9〜10小節〔右手〕

(誤)これがWnで不正確に記譜され、それをもとに製版されたWf(→Wa)ではf2[注:2は上付き]音がタイで結ばれていない。

(正)その後、WnおよびWfでタイの書き方はさらに不正確なものになり、Wf(→Wa)ではf2[注:2は上付き]音がタイで結ばれていない。

⑧ p.22 ノクターン H-Dur Op.32-1 第21, 42小節

(誤)Wf(→Wn1→Wa1→Wa2)

(正)Wf(→Wn1, →Wa1→Wa2)

⑨ p.87 脚注**

(誤)弟子のレッスン用楽譜ではffである。その時々の個人的なレッスンの指示であろうと思われる(p.40の脚注を参照)。

(正)弟子のレッスン用楽譜ではffである。[訳注:その時々の個人的なレッスンの指示であろうと思われる](p.40の脚注を参照)。

付記:原文に「その時々の個人的なレッスンの指示であろうと思われる」はない。[訳注]を付記すべきである。

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なお、訳者からの指摘とは別に、以下の欠落が発見されたので報告しておく。
p.10 ノクターン Des-Dur Op.27-2 第49〜50小節〔左手〕

→末尾に「同じ楽譜でショパンは、ppで弾かれる第50小節のces3[注:3は上付き]音を際立たせることも指示している。」の1文が欠落している。

以上、検証者 記
■検証結果を受けて
   検証により、河合氏より指摘のあった396箇所のほとんどにおいては問題がないことが明らかとなりましたが、上記10箇所につきましては訂正の必要が認められました。
   その原因を精査したところ、訳者である河合氏に起因するものと、監修者および編集者の作業過程で生じたものとの両方があることが判明いたしました。後者につきましては、訳者稿における日本語文章上の問題を解決しようとする中で生じたことでございますが、結果的に不適切な部分が残ってしまい、申し訳ございません。ここにお詫びして訂正いたします。
   今後はこれまで以上に最善を尽くして本プロジェクトに取り組む所存です。何卒よろしくお願いいたします。
全音楽譜出版社 出版部
正誤表はこちら
(プリントサイズ:B5)
4月5日に掲示した正誤表内⑧の文章中に一部脱落があり、修正しました。なお、訂正内容には変更ありません。(2022.4.28)