【ビデオレター】西村 朗《キールティムカ ユーフォニアムとマリンバのための》(12/9四人組コンサート)
12/9(金)に迫った第28回「四人組とその仲間たち」コンサート。
当日初めて発表される新作について、作曲家の西村朗さんから届いたビデオメッセージと作品解説をご紹介します。
西村 朗《キールティムカ ユーフォニアムとマリンバのための》
- 演奏:外囿祥一郎(euph)、西久保友広(mari)
演奏所要時間:約12分
作曲者による解説
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世界的なユーフォニアム奏者である外囿祥一郎さんから、ユーフォニアムとマリンバのための二重奏曲の作曲をすすめられ、その新作を全音の四人組コンサートで初演するというご提案をいただいた。マリンバは外囿さんとのユニットでもご活躍の名手の西久保友広さんがお引き受けくださるとのこと。
大変興味深いお話であり、ご提案を受けて作曲を試みることにした。
作曲にあたっては、ユーフォニアムとマリンバの出会いによるグッと前向きの表現パワーの増大を思い、ちょっと風変わりなテーマだが、以前から温めていた強烈なある「顔」に対する賛歌にしようと考えた。
キールティムカの顔。キールティムカは、顔と手だけの聖獣像。ヒンズー教の寺院などの門の上に鎮座している。その顔の睨みで外敵邪気を払う。
当然ながら、その物凄い顔にコロナ・マスクの着用は無い。
ユーフォニアムが奏するのは、牙の生えた大きな口が発する邪気払いの呪文。そして、貪り食べ飲む快感の喜悦と興奮の叫び。キールティムカは、蛇をも齧り食べ、なんと、かつて自らの体も食べてしまったと伝えられる。
そして猛烈な鼻息と深い呼吸の揺動。
一方、マリンバは大きく見開かれた両目とその眼光。頭の尖ったツノ。顔のゴツい骨格。堅牢な上下歯が打ち合わされてリズミックに時間をも噛み砕く響きと共に、味覚、臭覚、聴覚反応なども表現する。
以前から、「顔」のある音楽を書きたいと思うことはあったが、今回はさらに思い切って「顔」そのものが音楽であるような、そんな作曲を試みようとした。一種の諧謔性を伴った内容と言える。
(西村 朗)