加藤昌則KATOH, Masanori(1972.11.12-)

HANA-YOMI-BITO for Cello and Piano (or Guitar)(2020)

花詠み人 チェロとピアノ(またはギター)のための

楽器編成
vc,pf (or gt)
演奏時間
4’40”
カテゴリー
デュエット
初演
[Broadcast] 28 October 2020. Mari Endo(vc),Masanori Katoh(pf) [Version for cello and piano] 18 December 2020. Nagano. Dai Miyata(vc),Masanori Katoh(pf) [Version for cello and guitar] 10 September 2022. Kyoto. Dai Miyata(vc),Yasuji Ohagi(gt)
曲目解説
コロナ禍の緊急事態宣言下で、僕は音楽家としての自分とずっと向き合っていました。ありがたいことにそれまでに様々な活動をさせていただき、いろんなことが軌道に乗っていた最中での事態だったので、最初は喪失感や無力感に襲われましたが、ずっと外に向いてばかりいた自分が、次第に自分自身と向き合うようになり、自分にとっての音楽の必要性と、それがとても好きであるということを再認識していく中で、僕の原点である曲を作りたいという大きな欲求が生まれていました。自分が自分らしくいられることを再認識したとも言えます。
 ちょうどそんな折、ふと見た京都の芸妓のドキュメントは、やはりコロナで全てがストップし、期待や不安の中で必死にやってきた彼女の葛藤や心傷を、その世界に飛び込むまでと、それからの彼女の足跡を辿りながら見つめていくものでした。
その姿は切なくもあり、そして美しくもあり、夢中に取り組んできたものがストップする中で自らを省みる心境には自分と重なる面も感じたり、その言葉にはできない心に感じた心象をそのまま音楽にすることへの強い希求を感じて、書き出してしまったのがこの作品でした。
 活動の再開は、NHKの音楽番組の収録でした。その収録にこの作品の演奏を快諾してくれた遠藤真理さんとの演奏の時間は、この上なく幸福なものであり、それを噛み締める時間であったこともよく覚えています。
 この作品を気に入って下さった宮田大さんは、ギターの大萩康司君とギター版のアレンジでも何度も演奏して下さっています。
日本的な雰囲気や精神に基づいた作品を書くようになったのも、この頃からですが、多くのチェリストに演奏されるようになったこの幸運な作品が、演奏を通じて多くの人々の心に届き、何かの音楽の喜びを共有できるのであれば、作曲家として幸せなことですし、予想だにしなかった事態も私に新たな表現と言葉を与えてくれる機会になりました。
 そしてあの芸妓さんも、きっとさらに素敵に、人を魅了する姿で凛とした佇まいでおられるのだろうなと、時々想像したりします。

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