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山本純ノ介YAMAMOTO, Junnosuke(1958.2.24-)
SHIN RITSU RYO NIJU SHŌ for Violin and Piano(2014)
新律呂二重抄 ヴァイオリンとピアノのための
- 楽器編成
- vn,pf
- 演奏時間
- 12’00”
- カテゴリー
- デュエット
- 委嘱
- 全音楽譜出版社
- 初演
- 5 December 2014. Tokyo. Nobu Wakabayashi(vn),Kiyomi Yamamoto(pf)
- 曲目解説
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昨年大きな交響作品と交響コラボレーションの初演をすませ、自分の気持ちの中で一段落つき、次は「ヴァイオリン」。アマティ、ストラド、グアルネリ等、クレモナの達人が数多くのヴァイオリンの名器を排出したが、この族は、プロトタイプのような時代が存在せず、突然華やかな名器の時代を迎える。勿論、ガンバ属は様々変遷を重ねていたのだが、ヴァイオリンにはそのような形跡が見られずはじめから「スター」の位置を占めるようになる。この楽器は天才ということ。現在でも弦楽器の王様で管弦楽でもコンサートマスターを勤める。当時の日本で 「音楽」はどのように研究されていたか調べたところ、中根元圭(1662-1733)なる江戸時代中期の和算、天文家がいて、ピタゴラスのように音楽理論にも長けていた。雅楽や俗楽の音階を研究し、現在の十二音のように、オクターブを十二に平均した「律原発揮(りつげんほっき)」を著した。本日の曲の着想はここにあります。バッハ(1685-1750)と重なる時代に日本でも十二音に着目した学者がいた。そこに自分が生きていれば、ストラドがあれば、響かせる旋律はこれだ、と想は巡った。構成といった感覚が現代曲でも体得できれば、無調でもソナタ形式ABAは極論すればAとBが対比する二部に凝縮される。その辺りも考慮し、この曲は 「現代語法」や、 「素数」 を作曲に取り入れた中間部、その両脇は自由な旋律の楽想を中心としたAB の対比から成る。徳川吉宗の頃に活躍した中根元圭ヘ想いを込め、時空を交錯するように音を紡いだ。そして 「古くて新しい」名として命名した。
律(りつ) 呂(りょ) 抄(しょう) 等は西洋音楽のそれぞれ、リズム、旋法・音程、曲といった意味ですが、本日ご清聴頂ければ、明らかに西洋のそれらの印象とは異なることがお判り頂けるのではないか。
最後に委嘱を頂戴した、全音楽出版社様に敬意を表すとともに、出版の労をお願いすることとなり重ねて御礼を申し上げます。
参考文献;世界大百科事典(平凡社)、国立国会図書館
(初演プログラムより)
初演の折にヴァイオリンを担当した若林暢氏より、ボーイングをはじめテクニック上の示唆をいただいた。心より御礼を申し上げる。
ただとても残念なのは、再演を全力で果たした彼女はその後、鬼籍に入られた。
懐かしい旧友に出版をここに報告したい。
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