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阪田知樹SAKATA, Tomoki(1993.12.26-)
PORTRAIT pour orchestre(2024)
管弦楽のための〈肖像〉
- 楽器編成
- 2.2.2.2-2.2.0.0-timp.str
- 演奏時間
- 9’00”
- カテゴリー
- オーケストラ
- 委嘱
- 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
- 初演
- 11 January 2025. Kanagawa Prefectural Music Hall. Kanagawa Philharmonic Orchestra, cond. by Tomoki Sakata
- 曲目解説
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管弦楽のための〈肖像〉は、愛読書の一つであるレフ・ニコラエヴィチ・トルストイの長編小説『アンナ・カレーニナ』からインスピレーションを得て作曲された。取り巻く環境や関わる人間からの影響によって、1人の人間の思想や人間性、果ては進む道までをも変えてしまうことが描かれている『アンナ・カレーニナ』。10代に初めて読んですっかり魅せられてしまってからは、架空の隣人、アンナをたびたび訪れるようになった。本楽曲では、その物語を音楽に置き換えるのではなく、中心となる登場人物であるアンナの肖像画を音で描いている。
歪められたソナタ形式をとっている〈肖像〉は、フルートが奏でる、日常の中に寂しさを抱えるアンナを表す3音からなるモティーフで始まる。このモティーフは、楽曲を通じて形を変えて現れ、アンナの心境の移り変わりを表している。日々冷淡に扱われ(と本人は感じている)、心に闇を抱えたアンナの象徴である第1主題は、混濁した和声と共に提示される。それとは対照的に、アンナと恋人ヴロンスキーの愛のテーマとも言える第2主題は、調性的。展開部では感情が揺れ動くアンナ、そして、再現部ではヴロンスキーに固執し、変わり果てたアンナが姿を現す。ストーリーの面で共通する部分がある、チャイコフスキーの歌劇『エフゲニー・オネーギン』を想起させる旋律が、展開部にて暗示のように用いられている。再現部は、これまでに現れた旋律によって構成された「狂乱の場」。ベルクは歌劇に様々な器楽曲の形式を取り込んだが、拙作は、ソナタ形式の中に序曲、アリア、デュエット、ワルツ、スケルツォ、「狂乱の場」などといったオペラ的な要素を取り入れている。
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