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加藤昌則KATOH, Masanori(1972.11.12-)
EROSIONAL for Flute, Violin and Piano(2023)
イロージョナル フルート、ヴァイオリンとピアノのための
- 楽器編成
- fl, vn, pf
- 演奏時間
- 10’15”
- カテゴリー
- 室内楽(3人以上)
- 初演
- 4 June 2023. Hiratsuka. Ayako Takagi(fl), Shuga Hayashi(vn), Masanori Kato(pf)
- 曲目解説
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室内楽における民族的な素材を用いた作品を書き続けてきているが、この作品もその一連に含まれる作品である。
「イロージョナル」が生まれるきっかけになったのは、フルート、ヴァイオリンとピアノの編成による演奏会の企画があり、曲探しから始めたところ、この編成による三重奏は珍しい組み合わせのためか、実際に存在する作品が比較的少ないことからだった。まずは既成曲のレパートリーをあさるところから出発し、フルート作品で有名なゴーベール、ロシア5人組の一人キュイなどに興味深い作品を見つけた。それらは極めてヨーロッパ的な音楽であり、高音域で音を絡め合いながら展開していく音楽であった。
笛はどの地域にも古代から存在する楽器であり、フルートは特に原始的な発音体を用いているため、多種多様な民族的音楽を模倣することが可能である。また、ヴァイオリンもその発展はヨーロッパのクラシック音楽とともにあるかもしれないが、地域によって民族楽器的な使われ方をしているケースは容易に思い浮かべることができるだろう。
私自身、ピアノ奏者としてさまざまな音楽を演奏する機会を得てきたが、金属打楽器や木製打楽器のような打楽器的な音も模倣できるし、音階の使い方でさまざまな民族楽器に変容する可能性も体感してきた。
それぞれの楽器の源流や発展、多様性から、アフリカ的イメージから出発するこの編成のための音楽を発想するに至った。
「侵食」を意味するタイトルは、異なる発音体を持つ楽器がそれぞれに異なる独自の性格の音楽を奏でるところから始まり、別々に影響し合う中から次第に同化し、それらが互いにエネルギーを高めていって、恍惚の儀式へと昇華していくようなプロセスを経るという、この曲の構成から生み出された。
「民族的」という言葉を何度も使っているが、演奏に際して、この言葉のイメージからそれぞれの楽器の音のイメージを膨らませていっていただけると、楽譜には書き表せないさまざまな音色を創出していただけるのではないかと思う。また、そうしたプロセスで得られる「新しい」音色に興味と快感を得ていただけたら、とても幸せだ。
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