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茂木宏文MOGI, Hirofumi(1988.1.8-)
MEMORY OF CLOUDS Concerto for Violoncello and Orchestra(2019)
雲の記憶 チェロとオーケストラのための
- 楽器編成
- 2(I=picc, II=picc, afl).2(II=eh).2(I=Ebcl, II=bcl).2(II=cbn)-4.2(I=picc tpt).2.1-perc(4):tbells/SD/thunder sheet/vib/sizzle cym/tibetanbells(or ant. cyms)/BD/sus.cym/mokusho/woodblk/tam-t/mar/Chinese cym-hp-str, solo vlc
- 演奏時間
- 20’00”
- カテゴリー
- オーケストラ
- 委嘱
- 公益財団法人サントリー芸術財団(第27回 芥川作曲賞受賞記念)
- 初演
- 31 August 2019. Suntory Hall. New Japan Philharmonic, cond. by Yoichi Sugiyama, Kei Yamazawa(vc)
- 曲目解説
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ある瞬間の雲を切り取った時、それはもう過去のものとなり、その断片は自然の連続性から切り離されてしまいます。または、ある形として存在しようとしたその瞬間もまた自身の持つ連続性から切り離されてしまうようにも思え、そして何かを想像し、何かを“残す”という行為もまた連続性からの逸脱を意味しているのではないかと思うことがあります。
完成形という極限を夢想するも、それは常に先へ先へとこぼれ落ち、その目的地を未だ見ることはできません。
そんなことをぼうっと考えていた時、雲はきれいな空気からは発生しづらい。と、そんな話をふと思い出しました。空気中にあるほこりや塵など、水と親しみやすい性質をもった小さい粒があり、空気中の水蒸気の分子が吸着して水分子の膜を作る。そして、水蒸気の凝結が起こり、雲の粒になっていくという過程があるそうです。
空気中にある水蒸気は、核となる粒と共に空を覆い、自らを液体や固体へと姿を変え地上に降り注ぎそれがまた空に昇っていく。
この永遠に続くプロセスは、人間に知覚できないような時間の流れの一端を私たちが知覚できるようにしてくれているようにも思えます。
そして、この作品の独奏とオーケストラとの関係は、雲とそれを囲む大気の関係に似ています。大気の循環があるからこそ雲は存在出来、その不可分な関係を暗示しています。
混ざり合いながら引き離され、また溶け合う関係性をこの作品では主題とし、それ故にオーケストラ群が独奏者を時に圧倒し、時に独奏者が群を率いることもあります。
全体は途切れることのない単一楽章で、古典的なオーケストラと独奏の対比もありながら、室内楽的アンサンブルの質感を随所にちりばめながら構成されています。
単なる「現象」をこのように捉えることが良いのかわかりませんが、流動的でありながらもその形を保ち、ある時には不幸をもたらすが大きな恵みも同時に運んで来る。そんな「現象」に抱くポエティックな衝動を完全に否定することなくこの作品を仕上げました。
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