糀場富美子KOHJIBA, Tomiko(1952.7.11-)

CRANES for Soprano and Piano(1996)

鶴 ソプラノとピアノのために

詩:光井安子
楽器編成
S, pf
演奏時間
4’00”
カテゴリー
デュエット
初演
[Recording] November 1996. Vienna. Olga Warla(sop), Yasuko Mitsui(pf)
曲目解説
今から30年ほど前、ピアニストの光井安子氏から、ウィーンの著名なソプラノ歌手オルガさんのために曲を書いて欲しいとの依頼があった。広島在住の光井氏は、原爆被爆者で鶴を折りながら死んでいった禎子※の思いを自ら詩に綴られた。
 曲ができて楽譜を送ったものの、その後どうなったかは定かでなかったが、2022年の春にソプラノのレオポルド林香菜子氏から突然メールをいただいた。香菜子氏はオルガ先生の弟子で、ぜひ「鶴」を歌いたいので楽譜が欲しいとのこと。必死で探したが楽譜が見つからない。そこで音源を送っていただいて採譜をすることにし、東京藝術大学作曲科出身の前田奈央さんにお願いした。当時、彼女は東京音楽大学ソルフェージュ研究室で助手をしており、細かい修正のお願いをしながら、私自身も見直しながら楽譜を完成させた。今回の出版にあたり、再度見直し修正を加えた。
 曲は、詩の後半を前後に配して3部形式で書かれている。中間部では、詩の前半部分を用い、禎子の鶴を折る姿、か細く、しかし生きる希望を捨てなかった禎子の思いを表現している。どこまでも飛んでいく鶴に、生きる希望を託した禎子の気持ちを歌っていただければ幸いである。
 戦後80年の記念すべき年に作品が上梓されることになり、原爆を許してはいけないという気持ちを新たにしている。

※ 佐々木禎子さんは昭和18年に生まれ、2歳の時に被曝。被曝から10年後に突然白血病であると診断され入院。千羽鶴を「生きたい」という願いを込めて折り続けたが、8ヶ月の闘病の末、12歳で死亡。1958年5月5日(こどもの日)に「原爆の子の像」が広島平和記念公園に建てられ、今でも折り鶴が捧げられている。

2025年8月
糀場富美子


 レコード録音の伴奏をきっかけに、ウィーンの著名歌手オルガ・ワルラさんと知り合いました。日本で最初にご紹介したのが岩手県陸前高田です。美しい海と暖かい人に魅せられ、御出身のギリシャに因みオリンピアホールの建設を呼びかけました。ホールの建設は実現出来ませんでしたが、記念にCDを製作することになり、ギリシャの歌と日本歌曲に加え、オルガさんの平和の思いと友情に感謝し「鶴」を作詞しました。日本を代表する作曲家糀場富美子先生により、詩が音楽に生まれ変わることが出来ました。
 ヒロシマの平和が80億人の地球の平和になりますよう、鶴の翼に歌声を乗せて飛びたってくださいますように願います。

2025年8月
光井安子

楽器愛好家や音楽教育に携わる方々に幅広い楽器・教材を提供しています。

PAGETOP