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西村 朗NISHIMURA, Akira(1953.9.8-2023.9.7)
HETEROPHONY OF TWO PIANOS AND ORCHESTRA(1987)
2台のピアノと管弦楽のヘテロフォニー
- 楽器編成
- 3.3.3.3-ssax-4.4.3.1-perc(5)-hp-str, solo pf(2)
- 演奏時間
- 20’00”
- カテゴリー
- オーケストラ
- 初演
- 1987. Tokyo. Tokyo Symphony Orchestra, cond. by Kazuhiro Koizumi, Akira Jinno, Shun Satoh(pf)
- 録音
- KING RECORD/KICC-2015, CBC RECORDS/SMCD-5141, CAMERATA/CMCD-20016/17
- 曲目解説
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日本交響楽振興財団の委嘱により1986年から87年にかけて作曲。87年5月東京文化会館大ホールにおいて、小泉和裕指揮東京交響楽団、ピアノ神野明、佐藤俊により初演。90年2月にルーカス・フォス指揮ブルックリン交響楽団、ピアノ高橋アキ、フレデリック・ジェフスキーにより米国初演(ニューヨーク・カーネギー・ホール)、同年9月にはペーテル・エトヴェシュ指揮オスロ・フィル、ピアノE.H.Smebye、H.Austb?”によりヨーロッパ初演(Oslo Konserthus)がなされた。
この作曲当時、私は自分の作曲の手法あるいは語法として、ヘテロフォニーというものを自分なりにより確かなものに育てたいと願っていた。室内楽の作品においても、雅歌I「具象的ヘテロフォニー」、雅歌II「抽象的ヘテロフォニー」、雅歌Ⅲ「概念的ヘテロフォニー」などといった連作を試みたが、ついには、自分の持てる限りの創作エネルギーをフルに注ぎ込んだような交響的ヘテロフォニーを書きたいという欲求をつのらせ、このオーケストラ曲の作曲に没頭した。
2台のピアノはイメージとしてはオーケストラの中心に位置し、全体音響とその流れの発振源となる。激しく振動するピアノの強靭な響きの輪の中から、大管弦楽の響きがヘテロフォニックにたち昇ってくる、というのが作曲にあたっての原イメージ、原光景としてあった。ピアノ1台ではそのような響きの豊かさと持続力は得られないと思い、2台とした。曲は3つの楽章より成り、第2と第3楽章は続けて演奏される。
〈第1楽章〉は、2台のピアノのトレモロ旋律を軸とする線的なヘテロフォニー。空五度の強奏トレモロの激しいドローンもこの楽章の特徴的な響きで、この響きも原光景の中に見えていたものだった。
〈第2楽章〉は、2台のピアノと弦楽だけの比較的静かな楽章。2台のピアノの波状の動き、弦楽のグリッサンドでゆれる持続、静的な持続、それぞれが本来ひとつの面、あるいは層としての旋法的な和音の持続と移行を共有している。面的、ないしは層的なヘテロフォニーの楽章である。
〈第3楽章〉は8分の12拍子で始まる流れが、後半は4分の4拍子となり、16分音符の振動が、2台のピアノから、全オーケストラへと増殖してゆく。後半部分では(4・3・5・2)の疑似タ-ラによる波動が各パート間で追奏される。律動感のあるヘテロフォニーをフィナーレに置きたかった。クライマックスで、第1楽章の世界が回帰し、最後は2台のピアノが身もだえ、うなり叫ぶように激しく奏され、さらにそれをのみ込むかのような大オーケストラの咆哮の一撃で曲は終わる。
88年、第36回尾高賞を受賞。
出典:【西村朗 作品集1】蓮華化生~西村朗 管弦楽作品集
カメラータ・トウキョウ(CMCD-20016~7)
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