西村 朗NISHIMURA, Akira(1953.9.8-2023.9.7)

KAKAISEKAI,for Orchestra(2020)

華開世界

楽器編成
3(II=afl,III=picc).3.3.3-4.3.3.1-perc(5)-hp-pf-cel-str
演奏時間
17’00”
カテゴリー
オーケストラ
委嘱
NHK交響楽団
初演
2021. June 22,Tokyo. NHK Symphony Orchestra,cond. by Yoichi Sugiyama
録音
CAMERATA/CMCD-28393
曲目解説
花々の蕾(つぼみ)が時を得て次々に開花してゆくように、人の一生を包む時空の中で、世界は一瞬一瞬ごとに開花して輝き、目眩(めくるめ)く生まれ続けてゆく。
 道元禅師の言葉「華開世界起」から受けた一つのイメージ。
 このイメージは無論のこと禅師の言葉の本義からは遠いものであるが、一人の人間としての孤独な生死を思うとき、それは心に光と喜びと安らぎを与えてくれるものであった。
 管弦楽音響による私の内なる「華開世界」の表象化。そういう作曲を試みたかった。

 管弦楽編成のうち、5人の打楽器、チェレスタ、ピアノ、ハープの計8奏者は一つのグループを成している。打楽器は主に金属打楽器(ヴィブラフォーン、テューブラー・ベル、グロッケンシュピール、アンティーク・シンバル、サスペンデッド・シンバル、タムタムなど)。
 このグループは、それ自体が華開し続ける世界の表現を担うが、また、世界を華開させる水の流れのような、あるいは光のような、あるいは大気や風のような存在である。いわば世界の母体であり、曲中、動的、静的、波状、顫(せん)状等、様々な形で現れる。そうした流動母体から管楽器群、弦楽の音響世界が次々に生まれ出る。ハーモニクスや微分音を含む抽象的音響世界、旋律性を伴う具象的世界、パルス世界、トレモロ(震音響)世界等々。出現する連鎖世界の色調を多彩なものとすべく、多種の旋法(モード)を織り込んでいる。

 8人の奏者グループの波状音響とハーモニクス弦楽和音による一つの世界の出現で曲は始まり、最後はチェロ&コントラバスの低いD音とヴィオラのG♯音の持続の上空で、ヴァイオリン群が超高音域に吸い上げられて消えてゆく。
第69回尾高賞受賞。

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