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酒井健治SAKAI, Kenji(1977.8.6-)
PIANO CONCERTO “Cube”(2020)
ピアノ協奏曲〈キューブ〉
- 楽器編成
- 2(II=picc).2.2(II=Ebcl).ssax(=asax).2-4.3.3.1-timp.perc(4)-hp-str(14-12-10-8-6),solo pf
- 演奏時間
- 16’00”
- カテゴリー
- オーケストラ
- 委嘱
- 名古屋フィルハーモニー交響楽団
- 初演
- 10,11. March 2023,Aichi Prefectural Art Theater Concert Hall(Nagoya),Nagoya Philharmonic Orchestra,cond. by Takeshi Ooi,Filippo Gorini(pf)
- 曲目解説
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ピアノ協奏曲《キューブ》は2018年に一旦書かれた後、コロナ禍という未曾有な社会状況がもう一度この作品に向かう契機となり、2020年に完成した。第1稿にあった第3楽章「Xfade」が「Capriccio」に取って替えられ、第5楽章「Finale」が「Cube」として改訂された結果、コロナ(corona)禍中に完成されたこの作品は全て「C」から始まる副題を持つ5つの楽章から成立する事となった。
副題にある「キューブ」だが、2つの着想から名付けられた。1つは「仮想物理空間」という、フランスの批評家が僕の諸作品を評した概念に基づいており、(現実には起こり得ない空想の現象であるが)ある立方体が空間上に浮いた状態で激しくアングルを変えながら回転したり、ゆっくりと動いたりする姿を音で描こうと試みたのである。もう1つはキュビスムからの引用である。キュビスムは画家のパブロ・ピカソを語る上で欠かせないキーワードだが、ある物体を様々な角度から見た構図を一つの画面に収めるという画法を意味する。一見脈絡がないパッセージが突然挿入され音楽が進行するのだが、従来の弁証法的なクラシックの語り口とは異なる視点でもって、音楽の統一感を捉え直そうと試みたのである。
各楽章の副題は直裁的に音楽の内容を表現しており、第1楽章冒頭の滝の様に落ちるピアノの下降音型の様子から「カスケード」と名付けられ、第2楽章「コラール」では木管楽器によって冒頭に演奏されこの楽章の主題となる。事実上のスケルツォである「カプリッチオ」は対称の図形を音楽にした一種の遊戯であり、第4楽章の長大な「カデンツァ」を経て、ピアノと管弦楽が有機的に協奏する終楽章「キューブ」に至るのである。
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