酒井健治SAKAI, Kenji(1977.8.6-)

ETUDES POUR PIANO - premier livre(2016)

ピアノのための練習曲集 第1巻

I.グルーヴ,II. エコーズ,III. Scanning Beethoven,IV. ハーモニー,V. 無限の階段,VI. Sonnet for Lek & Sowat

楽器編成
pf
演奏時間
9’00”
カテゴリー
ソロ
委嘱
伊藤憲孝 (III.)
初演
I: 13. December 2014,Aster Plaza(Hiroshima),Noritaka Ito(pf) II: 13. December 2014,Aster Plaza(Hiroshima),Noritaka Ito(pf) III: 16. March 2013,Jun-Ongaku Saboh Musica(Hiroshima),Noritaka Ito(pf) IV: 11. September 2015,Takarazuka Vega Hall(Hyogo),Noritaka Ito(pf) V: 11. September 2015,Takarazuka Vega Hall(Hyogo),Noritaka Ito(pf) VI: 30. June 2016,Villa Medici(Rome),Kenji Sakai(pf)
録音
DISC CLASSICA JAPAN/DCJA-21026(III.)
曲目解説
私にとってピアノという楽器は最も近しい存在の楽器であり、作曲家の立場からピアノの技法について考え、私の理想とするピアニズムがこの作品に結集した。1曲目の「グルーヴ」は、短い動機を何度も繰り返し、徐々にそのパルスに変化が加えられる。2曲目の「エコーズ」は、強奏される両極端のクラスターの後の静寂の中での遊戯である。伊藤憲孝さんの依頼で書かれた3曲目の「Scanning Beethoven」では、カスケードのような半音階のパッセージに始まり、徐々にベートーヴェンの熱情ソナタの第2楽章のコラール変奏曲が顔を覗かせる。4曲目「ハーモニー」においては、中央のF音がオスティナートのように執拗に奏される中、ベートーヴェンの告別ソナタのホルンの5度と呼ばれる動機が、ハーモニックシーケンスとしてパッサカリアのように何度も繰り返される。5曲目「無限の階段」は、あたかもエッシャーの絵画のように、降りているはずの階段がいつの間にかまた元の位置に戻っていたという視覚の不思議を聴覚で表現しようと試みた作品である。同じ下降形の動機が絶え間なく繰り返される中、次第にその高度が下がり、また次第に上昇するという、音の身振りを前面に押し出した練習曲である。6曲目の「Sonnet for Lek & Sowat」によってピアノのための練習曲集第1巻が締めくくられる。ローマにあるメディチ荘に滞在していた時に書かれた練習曲で、作曲家自身によりメディチ荘のサロンで初演された。メディチ荘はローマ・フランスアカデミーの本拠地であり、過去にベルリオーズやビゼー、ドビュッシーも滞在していた。この歴史のある場所で知り合ったアカデミーの同僚の作品に、幾何学的な建物の写真を偶発的なカリグラフィーで彩る絵画があり、それを音で翻訳することを試みた練習曲である。

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