A HORN GETS ANGRY，YET HE CHANTS，for Solo Horn（2003）

1972?79年、6曲の《モノヴァランス》というソロ作品シリーズを書いた。それから四半世紀近くがたち、今回の曲と、たまたますぐあとにもうひとつソロ作品を書くことになった。そこでまずそれぞれ《モノヴァランスⅦ》《モノヴァランスⅧ》というタイトルを考えたのである。だが、僕の70年代の視座（《モノヴァランス》は、いわば音色の実験シリーズだった）と今日のそれとの間の大きな開きを思うと、過去を継承することなく、新しい地点に身をおきたい。それが、このような、僕のこれまでの傾向では登場しなかった類いのタイトルを選ばせた（ちなみに、すぐあとに書くのは《クラリネットは走り、そして考える》"A Clarinet runs，and he thinks"という曲である）。楽器のもつ「イディオム」に敢えて寄り添いつつ、だが、そこから異なる世界が浮かび上がってくることを目論んだ。
　曲は1から8のセクションでできている。その移行の間は、「唾抜き」などのために時間を少し置いてさしつかえない。また、1?8すべてでなく、いくつのセクションを選んで演奏家が構成してもよい。