STRATA XIII，for Flute and Clarinet（2019）

ストラータは「地層」の複数形だが、楽器の音域を地層と見立てたアプローチにより書きつづけているシリーズである。フルートとクラリネットそれぞれの音域を重層的に組み合わせていくことに、気持ちを集中させた。木管楽器の音域は、下限はすなわち当該楽器の管の長さが作る音ということになるが、上限は不定だ。とはいえ古典的な規範はある。今回は、その規範による上限を厳守した。また、現代音楽に頻出するマルチプル（重音）奏法や微分音も扱っていない。美しいとは言えないからである。フルートもクラリネットも、木管楽器のなかで突出した運動性を具有する。「地層」を縦横に駆け抜ける二つの楽器の機能を生かしたかった。そして、初演演奏の名手2人の存在そのものが、作曲のモチヴェイションになったのであった。