池辺晋一郎IKEBE, Shin-ichiro(1943.9.15-)

CHIRO SORO CHIROSORO,for Harmonica and Piano(2023)

ちろ そろ ちろそろ ハーモニカとピアノのために

楽器編成
harm,pf
演奏時間
8’00”
カテゴリー
デュエット
委嘱
全音楽譜出版社
初演
2023. Tokyo. Yasuo Watani(harm),Hisano Ishioka(pf)
曲目解説
ハーモニカのための作品を書くなんて考えたこともなかったのに、4年前に「ハーモニカは笑い、そして沸騰する」というソロ曲を書いた。今回と同じく、全音「四人組とその仲間たち」コンサートのための曲で、その後上梓され、数多い機会に再演されてきている。この予想もしなかった展開は、和谷泰扶さんという優れた演奏家との邂逅ゆえだ。その後和谷さんと何度もお付き合いするなかで、ピアノを伴ったハーモニカによるガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」などを聴いた。オーケストラの場合に比し、ブルーが何倍も濃いと言って過言でない。この小さな楽器が秘める強烈な表現力に圧倒され、今回、ピアノとのデュオを発想した。和谷さんのハーモニカに溶け合うピアノを、これまで何度となくお世話になってきた石岡久乃さんにお願いした。
大手拓次(1887~1934)の「夜の時」という詩の一節がタイトルである。全篇は──   

 ちろ そろ ちろそろ
 そろ そろ そろ
 そる そる そる
  ちろちろちろ
 され され されされされされされ
 ぴるぴるぴるぴる ぴる

ほかに「昼の時」「朝の時」もある。いずれも、意味のなさそうな擬音の連鎖だが、なぜかそれぞれの時の空気が漂う。不思議だ。僕は拓次の詩がかねて好きだが、2023年9月に急逝した畏敬する友・西村朗にも拓次による合唱作品がいくつかある。この曲の脱稿は?9月7日だが、西村が息を引きとったのはその日の夜。僕が彼の死を知ったのは翌日だったから、彼の死を知ることなく、彼も愛した拓次によるこの曲を書き終えていたことになる。
この巡り合わせを重く受け止め、この曲を西村朗の霊に捧げたいと思う。

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