轟 千尋によるオリジナル曲集第2弾!
心うごく瞬間をつむぐ、ピアノの抒情詩。
青空を泳ぐ雲、夕空を彩るグラデーション、暗闇と月の光のコントラスト……
さまざまな「碧」に寄せられた音楽が、奏でる人の想いと重なり、響き合う。
ピアノ曲集
轟 千尋 『碧に寄せる詩』
[内容]
前作『星降る町の小さな風景』から8年を経て発表されたオリジナル・ピアノ曲集。さまざまな空の情景からインスピレーションを受けて書かれた23作品を収載。鮮やかなグラデーションの夕空や深い夜に浮かぶ月、木々のささやき、まぶしく輝く水面などが豊かに描かれ、緻密に選び抜かれた音を通して奏者の心に語りかけます。前作と同程度の初級レベルから中上級レベルの作品までがちりばめられており、発表会のプログラムにはもちろん、コンサートのレパートリーにも適しています。
[商品情報]
税込 1,870 円(本体1,700円)
菊倍判/68頁/ISBN978-4-11-178619-0
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インタビュー
——『碧(あお)に寄せる詩(うた)』というタイトルにはどのような思いを込めたのですか?
轟:2020年3月、コロナ禍で救いを求めるように作曲し始めた私に、救いをもたらしてくれたのが“空”でした。空のさまざまな表情からインスピレーションを得て、思い出や大切な人たちのことを考えるうちに“碧”というキーワードにたどりつき、空だけでないさまざまな“碧”へと広がっていきました。
——曲集全体はどのように構想されたのでしょうか。
轟:2つのコンセプトを基に構想しました。1つめは「子どもから大人まで使える、曲ごとにレベル差をもたせた曲集にしたい」ということ。この曲集に出会った子どもが、成長の折々でこの曲集に触れ、長く愛してくれるようにというのが根本にありました。大人にとっても、弾き映えのする曲から学びのある曲まで、さまざまなレベルの曲が一冊にまとまっていることで、レスナーからプロまで幅広い方々に弾いていただけるのではと思っています。
2つめは「“耳を澄ます”ことを大事にした作品をつくろう」ということ。現代社会では、本質的な意味で“聴く”という行為が難しくなっているという話をいろんな人から聞きます。そんな今だからこそ、音楽の根本である“聴く”ことを大切にしたいと考えました。
——前作『星降る町の小さな風景』から8年が経ちましたが、どういった変化がありましたか?
轟:歳月を経て、自分自身にあった人間的な背景の変化が、曲にもあらわれているだろうなと客観的にみても思います。音楽的には、和声の語法を思いきったものにしたり、おもしろい転調を試みたりと、前作よりも冒険的な作曲ができたという感覚があります。
前作はシューマンの『子どもの情景』や『ユーゲント・アルバム』への憧れから、ピュアな心の声に耳を傾けて、自分の内面と静かに向き合いながら書き進めていたように思います。一方で今回は、“自分の語法で表現したい”という思いから、同じく自分の語法を探して苦しんでいたドビュッシーをあらためて紐解き直しました。思いを遠くへ、外へと飛ばしていくように……、前作よりも、自分に正直になることを強く意識しました。同時に、弾き映えと学びの要素の両立、言い換えれば自由と不自由の共存という方向性も発想の助けになったように思います。作曲中、ドビュッシーの思いきりのよい作品に背中を押されたこともあります!
変化とは反対に、ここ20年くらいずっと貫いている信念は、響きと構成の追求です。追求するなかで、シューマンを目指したり、ドビュッシーを紐解いたりと、重視するものが変わってきていることを、自分でもおもしろく感じています。
——とくに思い入れのある一曲はありますか?
轟:どの曲も大切ですが、あえて一曲挙げるのなら「哀歌」でしょうか。この作品は、自分の師が亡くなった時の喪失感や虚無感をそのままピアノにぶつけた作品です。私はこれまで特定の人のための曲を書くことはほとんどなかったのですが、“人のために”というのがエネルギーになることもあるとわかりました。自分の心に近い、大事な曲です。
——演奏する際のポイントを教えてください。
轟:作曲家の求めや先生のご指導に沿って弾くことも大切ですが、それに加えて、楽譜を通して曲と出会ってくださった方々がこの曲になにを感じるか、なにを思ったかについてしっかりと向き合い、それがどんな音となって命が吹き込まれるのか、とても興味があります。客観的な“正しい演奏”ばかりを追い求めるのではなく、“自分ごと”として、自分自身のアイディアや解釈を演奏に込めてほしい。解読するおもしろさ、推理するおもしろさを味わってもらえるような新曲をこれからも書いていきたいと思っています。
——三舩優子さんによるCDも発売されています。
轟:いろんな解釈のうちのひとつを三舩さんが具現化してくださったのがこのCDです。音色や調性感、間の開け方、ペダリングなど、楽譜には書き表せないことを、ひとつの可能性としてパッケージにしてくれました。自分では想定していなかったところに作品が到達したときにこそ感動しますし、そこではじめて作品が完成するという喜びが私にはあります。CD購入の限定特典もありますので、ぜひお手にとって聴いていただきたいです。
——楽譜を手に取ってくださった方へのメッセージをお願いします。
轟:この曲集と出会っていただくということは、あたりまえのようでいながらそうではないので、まずは素直に、感謝の気持ちを伝えたいです。この曲集が、その方々ご自身の気持ちや思い出と重なることができたなら、とてもうれしく思います。
プロフィール
轟 千尋(作曲)
作曲家。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院修了。日本フィルハーモニー交響楽団、九州交響楽団、兵庫芸術文化センター管弦楽団などのプロオーケストラ、広上淳一、徳永二男、三浦文彰、三舩優子、仲道郁代、辻井伸行、福川伸陽、米良美一の各氏ほか、数々の演奏家に作品を依頼・演奏されている。浅田真央アイスショー「BEYOND」では楽曲アレンジを担当。出版物多数。主な作品に『碧に寄せる詩』、『星降る町の小さな風景』、『《ねこふんじゃった》即興曲』、『きらきらピアノ』シリーズ(全音楽譜出版社)、著書に『いちばん親切な音楽記号用語事典』(新星出版社)、『音楽物語 わたし、ピアノすきかも』(音楽之友社)などがある。
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曲を聴く
CD情報
ピアノの音色が織りなす詩の世界。そこには四季折々の原風景が見えてくる。
轟 千尋の作品に三舩優子が生命を吹き込みました。
CD
ピアノ曲集
轟 千尋『碧に寄せる詩』
ピアノ演奏:三舩優子
三舩優子さんの演奏は、楽譜を読み解くということ、演奏においては音色と表現法の選択がいかに重要であるかということ、そしてピアノという楽器の魅力に、改めて気付かせてくれるはずです。(轟 千尋)
発行元:ビクターエンタテインメント
品番:NCS-3050
税込 3,080 円(本体2,800円)
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CD購入特典
聴く・弾くうえでのヒントが詰まった
『作曲家のひみつのノート』
*CD封入のQRよりダウンロードできます
プロフィール
三舩優子(ピアニスト)
幼少時代をニューヨークで過ごす。ジェローム・ローエンタール、井口秋子、奥村洋子、安川加寿子に師事。第57回日本音楽コンクール第1位。桐朋学園大学首席卒業後、文化庁派遣研修員としてジュリアード音楽院に留学。フリーナ・アワーバック国際ピアノコンクール、ジュリアードソリストオーディションで優勝。以後リサイタルはもとより、国内外の主要オーケストラとも共演を重ねる。海外公演、CDリリースも多数。ラジオパーソナリティー、NHK-BS2「週刊ブックレビュー」の司会など、多方面で活躍。マスタークラスやアウトリーチの教育活動にも力を入れる。2014年よりドラムの堀越彰と「最小にして最大のオーケストラ」と称するクラシックデュオOBSESSIONでも新境地を開き活動。京都市立芸術大学教授。
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